白い花が咲いたなら
ガラーンとした体育館には、真貴子ひとりだけ。
真剣な表情でバックボードのリングを見すえ、ボールを構えている。
フリースローラインの外にある彼女の足が、クッと沈んだ。
リズミカルに飛び上がりながらシュートを放つ姿勢に、迷いは見えない。
綺麗に伸びた両腕の手首が返って、ボールが放物線を描いた。
―― シュパッ……!
小気味良い音をさせて、ボールはリングのアミを素直に通り抜ける。
「おおー、ナイス!」
思わず声が出てしまって、真貴子がこっちを振り向いた。
「あ、怜奈、オハヨ」
「オハヨ、真貴子。邪魔しちゃった?」
「んーん。誰もいないから入っといでよ」
真貴子に笑顔で手招きされて、あたしは体育館の中に入り込んだ。