白い花が咲いたなら

 真貴子がボールを繰り返しバウンドさせる音が、静まり返った体育館の隅々まで響きわたる。


 彼女の目は、ボールと床をじっと見ている。


 あたしは、そんな真貴子を見ながら口を開いた。


「知らなかった……」


「そりゃそうでしょ。話してなかったもん」


「なんで言ってくれなかったの?」


「いやー、話して楽しい話でもないしー。 けっこう壮絶な内容だから言いにくくてさー」


 壮絶な内容……。


 わざと明るい調子で言う真貴子の様子を見れば、逆にどんな深刻なイジメを受けていたのか。


 真貴子がどれほど苦しみ、傷つけられたのか想像できるような気がした。


 あたしの腹の奥から、ふつふつと怒りがこみ上げる。

< 35 / 63 >

この作品をシェア

pagetop