白い花が咲いたなら

「でもね、一番辛かったのは、親が理解してくれなかったこと」


 真貴子はボールに向かって走り出す。


 ヒョイッと拾い上げたボールを、パッと花の形のように広げた右手の上に乗っけた。


 そして素早く手首のスナップを効かせる。


 真貴子の人さし指の上で、ボールが地球儀みたいに勢いよく回転した。


「理解してくれないどころか、責められたんだ。勉強もしないでバスケなんかしてるから、こんなことになるんだって」


 ボールは真貴子の指の上で回転を失い、ポロリと落ちた。


「お前の自業自得だ。……ってさ」


 タン、タンと音を響かせ、弾んで床の上を転がるボール。


 でも真貴子はそれを見ていなかった。


 彼女の目は、自分の過去を振り返っている。

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