白い花が咲いたなら

 真貴子は再びボードに向かって身構える。

「怜奈、見ててね」


 そして両目をそっと閉じ、彼女は軽やかに飛び跳ねる。


 天に向かって伸びる腕も


 ふわりと揺れる黒髪も


 地上から解放された足先まで


 真貴子は、すべてが自由だった。


 彼女の指先から放たれたボールは、彼女が信じた通りの道を描く。


 ―― シュパッ……!


 ボールがリングを通る音を聞いた真貴子は、目を開けて微笑んだ。


 見たこともないような、嬉しそうな笑顔で。


「怜奈、ほら、あそこ」


 そして真貴子が指さす先に、あたしは見た。


 体育館の床の上に、あの白い花が咲いているのを。

 
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