白い花が咲いたなら

「許せなかったんだ。あんまりにも突然で。こんなのありかよって」


「……うん」


「俺、まだまだやりたいこといっぱい、あった。だから……」


 恨んだ。憎んだ。

 俺を轢いた相手を。


 加害者は、腎臓の悪いおじいさんだった。


 遠い病院で透析治療を受けた、その帰り道だったらしい。


 疲れてたんだろうな。きっと。


 病気と戦いながら、ずっと大変な毎日を送っていたんだと思う。


 そのあげく、こんな死亡事故まで起こしちまって。


 ……わかるんだ。これは、純粋に事故なんだって。


 あの人に悪気があったわけじゃない。


 だけど、じゃあ、俺は誰を責めればいい?


 俺自身にはなんの落ち度も罪もないのに、大切な命を奪われて。

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