白い花が咲いたなら

「ん? 俺、花が見えるなんて言った?」

「え? だって今……」

「そんなこと、俺言った?」


 …………。

 言ったよーな。言ってないよーな。

 あれ? どっちだ?


「お前、耳も変なんじゃね?」


「うーん。耳鼻科医はちょっと、うちの親戚にもいないわねー」


「だから、真貴子の身内の宣伝はいいってば」


 近藤くんは笑顔であたしの肩をポンポン叩いて、離れていった。


 その後ろ姿を見ながら、真貴子がコッソリ耳打ちしてくる。


「近藤くんってさ、ぜったい怜奈に気があるよね」

「えっ?」


 彼の背中をポーッと目で追っていたあたしは、ドキッとした。

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