好きっていうまでは
私たちは街をふらふらしたあと、可愛らしいお店に入る。
外装は、木造の赤ずきんちゃんが住んでいそうな感じ。
扉は赤くて、中に入るといい匂いがした。
でも、ここに入ろうと言ったのは神木くん。
私はこういうところ好きだけど、神木くんはなんで…?
「こういうとこ、好きだろ?」
席に座ると、そう聞いてきた。
「うん。すきだよ?でもどうして?知ってたの?」
「なんとなく…?」
絶対嘘。だって、すこし笑ってるし。
「嘘でしょ?私には隠せない」
「あー。もうわかったよ!
聞いたんだよ。森奈央に」
神木くんは、奈央のことを苗字とつなげて、もりなおと呼ぶ。
リズムはいいけど、ちょっと違和感ある。
「あー。だっせー、俺」
苦笑いで頭をかく。