好きっていうまでは

電話の続き

【side 彩華】


このまま目を開けないのは許さない。

せめて、目を開けて私を見てからに…してよ。


私はるいの手を祈るようにして握った。

その手にわずかな反応があったのは気のせいだろうか。

気のせいなのかるいの顔を覗いた。


顔の筋肉が少し動いた。

これは…気のせいなんかじゃない。


「るい…?」

そう呼びかけると、るいの目がスーッと開く。

言葉では表せない感情というものがあるのだとわかる。

表せない感情は涙になって溢れてくる。


「ああ…本物の彩華が一番だよな」

疲れた声でそういった意味は理解出来なかったけど、

とにかくなんでもいい。

戻ってきたんだからっ…!

けが人にあまり無理させてはいけないと、

わかっていながら、 るいに抱きついた。
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