絶対に惚れさせてやる【非公開】




………………





「おい、ほんとに無茶すんなよ?」




「大丈夫って言ってるじゃん」




現在階段を上っている真っ最中



私達の学校の保健室は3階



だから辿り着くまで一苦労





階段の手前で




「ほら、乗れって」




彰が背中を向けて来たけど、私は見なかったふりをした





だっておんぶなんてされたら、お互い密着するわけで……





彰へのドキドキと萌亜先輩への罪悪感で普通で居られないことは目に見えていたから






私が逆の立場だったら…



彰が他の女子をおんぶするのなんて嫌に決まってる







「……紗、お前なぁ…」




「…よし、あと一段」






なんとか自力で登り切った後、保健室へ向かう廊下へ足を進める








そして、階段を登り切った位置から廊下への角を曲がろうとした時だった







「紗!前」



「……へ?」







ドンッ‼







下ばかり見ていて前の注意を怠っていた私は、怪我をしているにも関わらず思いっきり誰かにぶつかってしまった







ぶつかった私は当然足を怪我しているためバランスを崩し…





「…わっ」






後ろに身体が傾く






「っ!」





数秒後、身体全体を地面に打ち付けるであろうことを予想して目をギュッと瞑る






「紗!」





後ろからは彰の叫ぶ声






妙に長い時間だった







ガシッ




「…は?」



「…ぶねぇ」




支えられた身体




目の前の白いシャツ





普段よりよく香る柔軟剤の匂い





そして…生意気さを含む声









………一瞬で誰だか分かってしまった





「……おっ!瀬上じゃねーか」





「あ、彰先輩…だったっけ」






なっ……なっ…




バクバクと音を立てる心臓



緊張なのか驚きなのか分からない




ただ…今瀬上に会うと…





「だいじょーぶ?センパイ」



倒れかけていた私を立たせ、顔を覗き込んでくるのはやっぱり瀬上で





「あれ?
何かセンパイ顔赤くね?」






「う…うるさいっっ‼」






彰とは違う緊張感に



胸が苦しくなった








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