白いもの

僕は向こうから来る女性と目を合わせないようにしてすれ違った。


だけど、その下向きの視線がなんだか白くてフワフワとしたものを捉えた。


(チッ……まさか……アレ……じゃないよな? メンドイなあ……誰もいないし、いいかあ)


「あっ……落ちましたよ!」


僕はそれほど高くない声で彼女を呼び止めた。


彼女は自分のこととは気づかず、曲がり角を曲がってしまう。


僕は慌てて彼女を追いかけた。


「あ、あのっ! 何か落ちましたよ!」


今度はしっかりと聞こえたはずだ。


彼女もやっと気づいてこちらを振り返った。
< 3 / 16 >

この作品をシェア

pagetop