白いもの
僕は向こうから来る女性と目を合わせないようにしてすれ違った。
だけど、その下向きの視線がなんだか白くてフワフワとしたものを捉えた。
(チッ……まさか……アレ……じゃないよな? メンドイなあ……誰もいないし、いいかあ)
「あっ……落ちましたよ!」
僕はそれほど高くない声で彼女を呼び止めた。
彼女は自分のこととは気づかず、曲がり角を曲がってしまう。
僕は慌てて彼女を追いかけた。
「あ、あのっ! 何か落ちましたよ!」
今度はしっかりと聞こえたはずだ。
彼女もやっと気づいてこちらを振り返った。