【短】ある日桜の木の下で
「…さっきから何。」
しばらく見つめていると居心地悪そうに男の人は私を見る。
「あ…え、と……」
うまく言葉が出ない。
桜の木にもたれかかったまま、上目遣いで見てくる彼にドキドキが収まらない。
おかしいな、今初めてあったのに。
不審そうに首を傾げる彼に私は慌てる。
このままだとただの不審者になってしまう。なんか言わなきゃ。
えっと……何て言おう。
名前を聞く?
学年を聞く?
本の題名を聞く?
それともやっぱり名乗る?
「っ、さ、桜がお似合いですねっ!」
気づいたらそう言っていた。