もしも勇気が出たら君を抱きしめたい



「あ!岡部!九条先輩と伊東先輩来たよ!」

目ざとく見つけた二年生の部員が岡部に報告する。


「ほんまや!ももせんぱーい!」


岡部がブンブンと舞台そでから手を振るが、二人は話していて気づかない。


「岡部、伊東先輩、九条先輩にとられちゃったね。」

そういって部員がからかっていると、また別の部員がやってきた。


「岡部!結局もも先輩と九条先輩付き合ってるん?」

「付き合ってないよ!そうなったら絶対教えてくれるはずやもん!」

「岡部が知らんだけかもよ?」

「ちゃうし!もも先輩は絶対教えてくれるもん!」


岡部がむきになって言い返す。


「えー。だってあんなにお似合いやのに!ねぇ、先生!」

「・・え?」


急に話を振られて驚く。まさかこっちに話がふられるとは思っていなかった。


「もも先輩と九条先輩お似合いですよね?」


伊東と九条は相変わらず二人で話している。伊東が一生懸命身振り手振りで話しているのを、九条が苦笑しながら見ている。


「・・・うん。お似合いやな。」


「ほらぁ!先生も言うとるやんか!」

「だから!付き合ったらぜったい教えてくれるもんって言うてるの!お似合いなのは入学してからみんなずっと思ってるやん!」


岡部が何気なくいった一言が心に傷をつける。


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