もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


吹奏楽部内では、二人が付き合うことを祈っている部員が多い。

二人とも愛されている存在だからこそ、くっついてほしいという声が多いのかもしれない。


「岡部怒らないの!ほらっそろそろ始まるよ!」

「わかってるよ!先生もそろそろスタンバイお願いします。」

「わかった。」


指揮棒をポケットからだす。何回握りしめても、いつもみたいに気持ちがついてこない。


先生だから何もできない。

僕はいつもそう思っていたし、今もそう思っている。

でも最近ほんとうにそうなのか、わからなくなるときがある。


本当はそれを言訳にして、自分が動くのが怖いだけなんじゃないか。

本当はもっとできることがあるのに、結局は拒否されることが怖いだけ。僕は弱いだけ。



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