もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


大の大人が恋愛の悩みで、仕事に支障を出すわけにはいかない。

僕は頭をブンブンふって、雑念を追い払う。


今は、演奏する一曲一曲のことだけを考える。それだけを考える。


「では、吹奏楽部クリスマスコンサートが始まります。どうぞ。」


アナウンス係の部員の声が響く。


「指揮は、松井先生です。お願いします。」


そのセリフとともに舞台にでる。

伊東と九条が拍手しているのが見えたが、僕はできるだけ意識をそっちにはもっていかずに、ただ指揮をふることに全神経を集中させた。



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