もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


でも、コンサートが終わって一時間がたっても、まだ校門の近くにいるなんてことはありえなくて、僕は見つけたかった人影を見つけられずにいた。


僕は我に返って箱を開けてみる。

そこには、クッキーがたくさん入っていた。



なんで、帰り際に呼び止めなかったんだろう。

独特の丸文字は伊東が書いたものだ。

僕はきっと何かを間違っている。僕はきっと、何かを見て見ぬふりをしている。


自分の気持ちが伝わるか、伝わらないかそんなことじゃなくて。


もっと見て見ぬふりをしていることがある。

伊東に言わなくちゃいけないことがある。


「先生」


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