もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


「先生、卒業式が終わっても言わないんですか?」


岡部達が練習に戻ったのを確認して、九条が声をひそめる。

なにを?と聞けるほど、僕はバカでもなかった。


「勇気がない。この関係を壊したくないっていうのもある。」


まるで高校生の言訳だった。


「まぁ、まだ時間あるし、考えてください。」


そろそろ帰ります、と九条が腰をあげる。


「俺は、先生と伊東お似合いやと思いますよ。」


「僕は、九条こそなんで今まで告白しなかったのかわからんけどな」


素直な疑問をぶつけると、九条は小さく笑った。


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