もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「伊東!」
岡部が泣き止んだところで、伊東に声をかける。
「なに?」
「伊東、定期演奏会くるよな?」
今日で、会えるのが最後じゃないことだけ、確かめておきたかった。
「・・・いくよ。予定あける。」
「よかった。」
「先生、またね。」
またね、って言葉だけで十分だった。
また、がある。次がある。また君に会える。
それだけでいい。それで十分だ。
「うん。また。いつでもおいで。」
僕は笑顔で、伊東を見送った。