もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


約束はした。けど、その約束がいつまで有効なのかはわからない。

きっと大学に行けば、出会いもたくさんあって、

だから、僕のことはきっと思い出にしているだろうと思っている。


それは僻みとかではなくて、伊東には幸せになってほしくて、

だけど胸の奥は少しだけ痛む。


そんなことを考えながら、研究室のドアを開けようとして、僕は手を止めた。


しまっているはずのドアが少し開いている。


僕の研究室に入る人はそうそういない。

開いているドアに手をかけて、そっと中をのぞき込むと、僕の席の前に誰かが座っていた。

スーツ姿で、長い髪を後ろで束ねている。


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