もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
逆光で顔が見えないが、女の人には間違いなかった。
僕は新学期の前の会議を、風邪で全部欠席しているから、新しい先生とは顔合わせをしていない。
しかし、何人か毎年新しい先生が入ってくるから、その先生かなと思い、僕は残りのドアを開けた。
「・・・・うわぁ、変わんないね」
僕は、金縛りにあったみたいに動けなかった。
なんども、なんども夢にみた光景と同じだったから。
「先生、ただいま」
髪がだいぶ伸びた。僕の記憶の中よりも、少しだけ大人っぽくなった伊東がいた。
「なんで・・・」
「今年から、ここで働く。先生になれた。だから、約束守りに来た」
まさか、と僕は呟く。