もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
後ろから思いっきり突き飛ばされて前のめりになる。
「うわっ、ごめんなさいっ!そんなにぶっ飛ぶとは・・・」
ごめんなさいと言いながらも伊東はおなかを抱えて笑っている。
こいつは、今僕が自分のことを考えていて、しかも勝手に失恋してたなんて想像もしないんだろう。
「いきなり後ろから突き飛ばされるなんて誰も思わないだろ!」
「えーっ!でも九条はちゃんとリアクションするもん」
「三年間ずっと一緒のお前らと一緒にするな!!」
自分で言って、自分で気づく。
僕は、伊東の彼氏にもなれないし、つらい時に寄り添えるほど近い距離にもいない。
伊東がつらいとき支えるのは、きっと彼氏か、九条になるんだろう。
「だって、廊下の先に先生見えたら嬉しくて走り出しちゃうやんか!」