もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「先生っ!先生ってば!!」
遠くで聞こえる声に目を細める。
「先生!起きて!」
肩を乱暴に揺さぶられて目を開けると、目の前にくりっとしたまん丸い目が二つ。
「やっと起きたぁ」
嬉しそうなその声の主は僕の気持ちも知らないで、にこにこと僕に話しかける。
「化学の宿題なんだけどね、って先生聞いてる?」
「聞いてるよ」
声が少し不機嫌になったのは、昼寝中の昼休みに無理やり起こされたからじゃない。
この無神経娘が全く僕の気持ちに気づいていないからだ。
松井 龍。26歳。
この気持ちが、もし誰かに知られてしまったら、僕はもうここにはいられないし、へたしたら警察沙汰になるんだけれども、
僕は8歳年下の女の子に恋をしていた。