もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「先生」
いきなり名前を呼ばれた僕は、この流れで自分が呼ばれると思っていなかったから。返事ができなかった。
それに構うことなく、伊東はふりかえってはっきり言った。
「先生、岡部たちのとこ行ってもらっていい?」
振り返ったその目には、涙がいっぱい溜まっていた。
そして、その声は完全に僕を拒絶していた。
「・・・わかった」
そういうしかなかった僕は、はいりかけていた足を引っ込めてドアをしめる。
けど、なんとなく足が動かなくて、準備室のドアに背をもたれかける。