もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
六月に入った途端雨が多くなった。
じめじめした空気は気分までも重くする。
「はぁぁぁぁぁ」
あからさまなため息が僕の部屋に響く。もちろん僕のため息ではない。
ため息をはいた主は、化学の問題集に頭を突っ伏して、足をバタバタさせていた。
「せんせー」
「なにー?」
「かまって」
こうやって定期テスト前に、問題集をもっておしかけてきた伊東を追い出さずに、解き方を教えてる時点で、結構かまっているつもりだったのだが
今日はどうもご機嫌ななめらしい。