もしも勇気が出たら君を抱きしめたい

今日新学期のはじまっていない学校にきたのは、顧問になることになった吹奏楽部に挨拶にきたからだった。

「先生がそろそろつくはずだって聞いたので迎えに来ました。音楽室は別棟にあるんでわかりにくいから。ついてきてくださいね。」

そういうと彼女はにこっと微笑んで、踵を返す。

今、思えばこのときにもう恋に落ちてたんだ。

窓からさす木漏れ日が君の短い髪にやさしくかかっていたことも、まだ冷たい風が君のスカートをそよがしていたことも、こんなに鮮明に覚えているのだから。

この日から僕は、絶対に好きになってはならない君に恋をした。

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