もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
けど、そんな努力の甲斐あってか、三年生のほとんどが部活に残ることになった。
今はコンクールに向けて大詰めの時期だ。練習が終わるのが九時をすぎることがほとんどだった。
僕の仕事は、最後まで残って生徒を安全に見送り、準備室と音楽室のドアを閉めて職員室の棚に返すこと。
今日も同じように九時に部員を見送り、鍵閉めをしようと校門から音楽室に戻っていた。
暗い廊下を歩きながら、いつも同じことを考える。
伊東にとって、僕はいったいどういうポジションなんだろうか。
(伊東いわく、九条のポジションはお兄ちゃんらしい。それを聞いてどれだけ僕ががっかりしたことか。)
九条でもお兄ちゃんなら、自分なんて、きっとなんでもない存在なんだろう。