もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


けれど、前よりも確かに二人の距離は縮まっていた。

伊東は僕の前で泣くようになったし、僕は伊東が辛いときにそばにいてあげれるようになった。

だけど、それでもと思う。

それでも足りないなんて思っている僕がきっと教師失格で、けどどうしてもこの気持ちだけは消せなくて、

そんな堂々巡りな考えばかり頭に浮かべていたからだろうか。前からくる人影に全く気付かなかった。


「あれ?先生なにしてるん?」

「うわっ」


思わずまぬけな声を出した僕を見て、驚かした本人はくすっと笑った。


「先生びっくりしすぎやろ」

そりゃびっくりするだろう。今考えていたのは、君のことなんだから。


< 41 / 140 >

この作品をシェア

pagetop