もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
けれど、前よりも確かに二人の距離は縮まっていた。
伊東は僕の前で泣くようになったし、僕は伊東が辛いときにそばにいてあげれるようになった。
だけど、それでもと思う。
それでも足りないなんて思っている僕がきっと教師失格で、けどどうしてもこの気持ちだけは消せなくて、
そんな堂々巡りな考えばかり頭に浮かべていたからだろうか。前からくる人影に全く気付かなかった。
「あれ?先生なにしてるん?」
「うわっ」
思わずまぬけな声を出した僕を見て、驚かした本人はくすっと笑った。
「先生びっくりしすぎやろ」
そりゃびっくりするだろう。今考えていたのは、君のことなんだから。