もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
伊東のこういうところが、ほんとにずるいと思う。
ずるいって思ってしまうのは、僕が伊東に好意を寄せているからなのだけど。
二人で鍵閉めをし、職員室に鍵を返す。
校門まで、伊東を送ろうと廊下を歩いているときだった。
「ん?あそこ誰かおる」
伊東が校門を指さした。確かに人影が見える。
「誰か待ってるんちゃう?」
「えー?こんな時間に?絶対あやしい」
「まぁ、僕が校門までついてくから大丈夫よ。危なそうな人やったら家まで送るし」
「先生もてそう」
「はぁ?」
なぜいきなりそこに話がとんだのか。
「ジェントルマンやなぁと思って!先生今彼女おらへんの?」
伊東がいたずらっ子の顔になる。
「おらんわ!」
「確かに。おったらこんなに毎日吹部これんよな。」
誰がいるから毎日行ってるんだと、心の中だけで毒づく。