もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「九条」
僕が呼ぶと九条はすぎに振り返った。
「伊東どうした?・・・あの顔は」
「顔って先生、だいぶ失礼」
「いや、そうやけど」
「なんか僕も詳しく知らないですけど、先輩が浮気してたらしいです。別れてはないから許したんだろうけど、相当傷ついたんだと思います。」
僕は言葉を失った。
伊東のほうを見ると、後ろのほうから後輩を誘導している。
「部員たちには花粉症がひどすぎて、目は腫れるは声はでないはだから僕に代わるっていったみたいです。」
徹底的に弱さは見せたくないらしい。けなげなのか、なんなのか、どうしてそんなに自分を強く見せるのか。
最後に、先輩のほうに嬉しそうに駆けていった伊東の姿が頭に浮かぶ。