もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「先生」
振り返ると九条が立っていた。
手には後輩たちからもらったプレゼントや寄せ書きでいっぱいだ。
「短い間でしたけど、ありがとうございました。」
「いえいえ、僕はとくに何もしてないよ」
「そんなことないです。先生の指揮、すごくよかったし」
「ありがとう」
そういわれると素直にうれしい。金賞をとれなくて、僕は少し責任を感じていた。
「金賞とれなかったのは残念やったけど、先生の指揮で演奏できてよかった」
「九条のソロもよかったよ、すごく」
素直な感想をいうと、九条は照れ臭そうに笑った。
「先生と話す機会も少なくなりそうなんで、言いたいことがあるんです。」
「どうした?」
そこで九条は顔をよせてきたので、僕もしゃがむかたちになる。(僕は181cmあるけど九条は160cmしかない。)
「先生、僕と伊東はなんでもないんで、安心してください。」