もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「先生っ、聞いてる?」
「え?あ、ごめんボーっとしてた。」
「もーこの問1全くわからんねん、なんとかしてよー」
「そういわれても、教えることしかできへんよ」
「・・・そういう事実を言うてほしいんちゃいますー」
だから化学は嫌いだ、とかブーブー言いながら、目の前で問題を解いていく。
すぐに手をとめて、頭をかかえ、しばらくすると上目づかいでこっちを見てくる。
「・・・わからん」
「さっきと同じようにやってごらん」
「だから、それがわからんのー」
もう何回も同じことを教えているのに、彼女は全く理解していない。
もしかしたら、わざと聞きに来てるんじゃないかとか、都合のいい妄想をしてしまう。
まぁ、彼女は僕の気持ちになんかこれっぽっちも気づいていないんだけれど。