もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
気のせいかもしれないけれど、屋上から帰るとき伊東は泣いていた。
少しだけ瞳をうるませて、それを強くぬぐって、僕には弱さは見せない。
「伊東!」
校門を出て、帰ろうとする伊東の後ろ姿に声をかける。
「なにー?」
「今日はありがとう!花火!見れてよかった!」
そう叫ぶと、予想外なことに、伊東が走って戻ってきた。
「え?」
「先生っ!!」
「どうした?忘れ物か?」
僕の問にブンブンと首をふる。
「先生!ありがとう。今年の夏一番の思い出できた!」
そういってにこっと笑った伊東は、今までで一番かわいい笑顔を見せた。