もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


「先生、久しぶりに研究室いっていい?」

「うん」


久しぶりに二人で並んで歩く。なんとなく懐かしくて、少し後ろを歩いていると、視線を感じたのか、伊東が振り返った。

「なに?」

そう笑いながらふたつにくくった髪を触る。

「いや、髪の毛、伸びたなと思って」

「そう?伸ばしてるからなぁ」


なんだか、こんな会話をするのも久しぶりで思わず顔がほころぶ。


「今日先生変。」

「え?なんで?」

「なんかいいことあった?」


久しぶりに会えて、話せてうれしいなんて、口がさけても言えないけれど。

もしかしたら、伊東は気づいてるのかもしれないな、なんて思ったりもして。



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