もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
伊東はまたほほ杖をついて、窓に目を移す。
「来年はどこで何してんのかな」
ポツリとつぶやいた言葉は、僕に向けたものなのか、独り言なのかはわからない。
「伊東は大丈夫よ。俺が保障したる。伊東は頑張れるよ、どんなとこにいっても。」
我ながらよく言ったと思う。こんなクサいセリフ。
なんとなく顔が照れ臭くて見れなくて、椅子の背もたれにもたれて、コップを顔の前まであげる。
「・・・先生」
「ん?」
「ありがとう。がんばる。」
おそるおそる前を見ると、伊東はまだ窓の外を見ていた。
その目が少しだけうるんで見えたのは、気のせいだったかもしれない。