もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
道具を見張るだけかと思いきや、いろいろ配ったり集めたりと結局動き回ることになり、あっと言う間に午前最後の種目になった。
このころには、僕はすっかり疲れきっていて、ベンチに深く腰掛けてタオルを顔にのせて休憩していた。
すると、急にタオルをとられた。まぶしい日差しが急に目に飛び込んでくる。
「先生さぼり?」
「そんなわけないやろ!さっきまで走り回ってたわ!」
「うそうそ、ちゃんとみよったよ」
伊東がけらけら笑う。
「ここでなにしてるん?」
「次の種目でるんよ、借り人競争!」
午前最後の種目の借り人競争は、毎年お題が面白くて、午前の中でもっとも華がある種目だ。
「先生ずっとここおる?」
「おるよ」
「んじゃお題によってはくるかも」
「はいはい」
んじゃね!と手をブンブンふって伊東はクラスの子と運動場へ走って行った。