もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「先生!」
僕の生徒は、デリカシーのないやつがあまりにも多い。
ガラガラといきなり開いたドアを睨む。
「あれ?今忙しい?」
あと、僕を暇人と勘違いしている生徒が多すぎる。
僕はノックもせずに飛び込んできた九条を、椅子に座ったまま睨んだ。
もちろん、僕だって仕事してるんだぞという思いを込める。
だが、この男はそんなこと気にしちゃいない。僕の前の椅子をひいて、当たり前かのように座った。
「先生ひさしぶり」
「僕のこと暇人だと思ってるやろ」
「間違いない」
そこまで断言されると、否定する気も失せる。
「伊東のことやねんけど」
僕は全く聞く気がありませんよオーラを出していたのだが(最近九条の話題は塾のかわいい女の子の話ばかりだったから)、伊東の話となると別で。
パソコンから顔をあげ、画面を閉じる。