もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
僕は九条の前では、断言はしてはいないが、伊東に好意があることを隠さなくなっていた。
「伊東ふられたらしい」
「はぁ?」
僕は思っていたより大きな声が出て、自分でもびっくりした。
「嘘やろ?」
「ほんま。本人から聞いた。一週間前やって。」
一週間前といえば、11月模試の三日前くらいである。
「なんで今?」
「俺も受験前やのにそれはないやろ、って思った」
九条は先輩のことをあまり好いていないらしい。
「伊東は?大丈夫なん?」
今週は明日に授業があるから、まだ一度も伊東を見ていない。