もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
僕は今の話が聞かれていなかったか冷や冷やしたが、九条は全く動じていない。
「伊東ひさしぶり!」
「九条が先約かぁ、せっかくきたのに」
「いや、俺2時間ぐらい話したし、もう帰るよ」
来て15分くらいしかたっていないのに、九条は自分のリュックをせおった。
クラブをしていた時から、ずっとそうだが、九条は伊東に絶対気を使わせない。
理由を聞くと、「伊東は人一倍気いつかいいやから、自分のしたいことよう言わんから、言えるようにしてあげたい」と言っていた。
本当に、この二人の間の絆にはかなわないといつも思う。
「ほんまにいいの?」
「いいよ!いつでも話せることやし、んじゃ先生おつかれー」
そういって九条は研究室を出ていった。