もしも勇気が出たら君を抱きしめたい
「・・・よかったんかな。邪魔しちゃった」
「いいんちゃう?本人がいいって言うてるし」
「九条にはかなわんなぁ。たぶんいろいろ察したから、嘘ついたんやと思う。」
そういって伊東が笑う。
九条はばれていないと思っているけど、伊東は九条のやさしさにちゃんと気づいている。
九条が座っていた椅子に、今度は伊東が座った。
顔を見ると、確かに目が腫れている。
「今日塾さぼちゃった。たまにはいいかな」
伊東はいたずらっ子みたいに舌をだしたが、腫れてる目が痛々しくて、僕は何も言えなかった。
「九条に聞いた?」
「なにを?」
せいいっぱい平然をよそおったつもりだったけど、ばれてしまったらしい。
伊東は苦笑交じりに言った。
「先生と九条は似とる」
「どこが?」
「嘘がわかりやすいし、嘘つくのへた。