もしも勇気が出たら君を抱きしめたい


結局このあとは、何もなかったみたいに、普通に会話をして伊東は帰って行った。


伊東がいなくなった席を見つめながら考える。

もし、僕が学生だったら、逆にもし、伊東が学生じゃなかったら、


僕は間違いなく、今みたいな状況になったら、伊東を抱きしめていただろうし、抱きしめたいと思う。

それに、伊東もそれを望んでるんだろう、と思う。


けど、それはあくまでも仮定の話で。しかもその仮定の中で、僕は伊東と同じ学生で。


本当は、伊東は学生で、僕は教師で。

抱きしめることなんて絶対に許されないし、伊東がそれを望んでいるわけもなくて。



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