さよならリミットブルー

ここで負けたら碧人くんは一生、わたしを名前でなんか呼んでくれないかもしれない。

そんなの嫌だよ。

わたしの小さな願い事が叶わず消えてしまう。

頑張れば叶うなら、最後までやり通せ。

強引にやる気を叩き込んでから無我夢中にボールを追いかけて、ただひたすらに声をあげた。



ーピーッ

体育館中に響くホイッスル。

その音に弾かれるように、特典パネルを見た。

あと、1点………。

なんとかギリギリ持ち堪えて、ようやくマッチポイントまで漕ぎ着けた。

しかも次のサーブはわたしだ。

「芽衣子、頼んだよ」

「うん……!」

手渡されたボールは今日1番の重みを感じる。


ミスをしても、きっと誰かが決めてくれるだろう。

そんな歪な考えが脳内を通り抜けた。


ううん、誰かじゃなくて自分でやるんだ。

わたしが決めたいの。自分の想いはこの手で勝ち取るべきだと思うから。

わたしは決意は誘惑なんかに左右されない。

それくらい気持ちは固まっていた。
< 100 / 313 >

この作品をシェア

pagetop