さよならリミットブルー
まず始めに向かったのは、数ヶ月前まで碧人くんが住んでいた家。
「来るの久々だな」と言っていたのを聞く限り、記憶を無くしてからすぐに家を出たんだと思う。
残されたままの空っぽな一軒家は心なしか、寂しそうに見えた。
「綺麗な家だね…」
いったい、碧人くんたち家族の想いがどれほど詰まっている場所なんだろう。
考えるだけで見ているのが辛くなる。
家族との思い出が一切消えてしまうことの残酷さを改めて感じてきた。
お母さんやお父さんとの関係もあまり上手くいってないみたいだし心配だ。
それに、記憶を取り戻すことを碧人くんのお母さんたちはどう考えているんだろう。
賛成なのか。それとも反対か。
勝手な意見をを押し付けたわたしのことを知ってるのかな。
「………親には全部話してるから」
「え?」
何も言わず、ただ隣に立っていた碧人くんが不意に言葉を吐いた。
わたし……まだ何も言ってないのに、気づいたの?
「碧人が決めたことなら反対はしない。そう言っていた」