さよならリミットブルー
碧人くんの家から離れた後は、通っていた小学校から高校まで回ってみたけど、収穫はゼロ。
どこに行っても碧人くんの様子は変わらないし、やっぱりどの場所も覚えていないらしい。
ちょっと前まで過ごしていた高校なら何かあるかも……って期待してたけど、ここもハズレ。
昔に通ったことがある道を歩いたって、今の碧人くんには初めて歩いた道に全て変換されている。
上書きされてばかりで進歩が何もない。
記憶を取り戻すのがどれほど難しいことなのか、改めて思い知らされた。
「はぁ……次はどこに行こう………」
行く当てもなく、ただ彷徨っているだけでは何も起きたりしない。
「行ってみたいところある?」なんて碧人くんに聞いたところで「ない」って言われるのがオチだ。
何も言わずただ隣を歩くだけ。
ちらりと横目で視線を送っても、平然とした顔で前しか見ていない。
記憶を取り戻すことなんて本当にできるのかなぁ………。
「なぁ、芽衣子」