さよならリミットブルー
ため息を吐きかけた瞬間、隣でわたしの名前が空気に触れた。
「っ…………!?」
聞き慣れた声から、聞き慣れない言葉が飛び出すと、人はかなり動揺してしまうらしい。
声もあげられないほどの衝撃が喉の奥で詰まっている。
「……芽衣子?」
ほら、また。
自分から名前で呼んで欲しいと言ったくせに、実際そうなってみると違和感と恥ずかしさが交互に押し寄せて、途端に身動きを奪われた。
碧人くんに呼ばれるたび、なんの変哲もない自分の名前がキラキラ輝いて聞こえるの。
照れがあるのに嬉しくて、もっと欲しくなっちゃう。
「おい、返事しろって」
「ひゃあ!?」
突然詰められた碧人くんとの距離に驚き、ビクンと肩が跳ねる。
ドクドクと脈を打つ心臓がさらにわたしの焦りを加速させていた。
「うぉっ、急に叫ぶなよ」
「ご、ごめん……つい……」