さよならリミットブルー
昔の碧人くん、か。
昔の碧人くんのことは当然のように何ひとつ知らない。
記憶を取り戻したその時は、本当の碧人くんを教えてくれるのだろうか。
そんな考えが頭の中にふわりと浮かんできた。
「ここから見える景色、なんだか懐かしいな………」
展望台に登ってから、碧人くんを纏う空気が明らかに違う気がする。
もしかして、何か思い出せたの………?
「懐かしいって、ここに来たことがあるってこと?」
どこに行っても変わらなかった碧人くんが、はっきり「懐かしい」と口にした。
それなら、きっとこの場所は大切で思い深い場所に違いない。
「たぶんな。誰かとよくここに来ていたような、そんな感じがする………」
軽く頭を押さえながら、ぼんやりと焦点が合わないような瞳で景色を眺めていた。
間違いない。
碧人くんの記憶は戻り掛けている。