さよならリミットブルー
「ねぇ、碧人くん。なんで喋らないの?」
隣に座る碧人くんはやっぱり変わらず無表情で、ちゃんとわたしの声が届いているのかすら怪しい。
北上さんに会ってからずっとこの調子だ。
何考えてるのかさっぱりわかんないや。
「碧人くん聞いて……」
「ごめん」
「えっ」
ずっと喋らなかった碧人くんがただひと言呟くように「ごめん」と口を動かした。
「どうして謝るの………?」
別に怒っていたわけじゃない。
ただ、とうして喋らないのか聞きたかっただけで「ごめん」と返事が返ってくるとは思ってもいなかった。
「……………結構動揺してたんだ。昔の俺を知ってる人、親以外に初めて会ったから」
俯きながら、弱々しい声で言葉を繋げている。
「あっ、そうだよね……急にこんなことになったら普通びっくりするよね」
考える暇もないままここに来て、昔の自分を突きつけられる。
それがどんなに残酷で悲しいことなのか、やはりわたしはよく理解していなかった。