さよならリミットブルー

北上さんとは記憶を失ってから初めて会ったみたいだし、下手に口を滑らすわけにもいかない。

どうしよう………。

頭を悩ませ考えても答えには辿り着かなくて、「えっと」とか「あの」を飽きずに繰り返している。


これ以上何も考えられないくらい頭の中は真っ白だ。


「どうしたの?」

「ひっ……」


答えにもたついていれば、北上さんから「どうしたの」と声が掛かるのは当たり前。

わかってはいたけど、動揺を隠せないわたしの額にはじわりと冷や汗が滲んでくる。


だめだっ………これ以上誤魔化せない上に、適当な答えすら思いつかない。

わたしってこんなに臨機応変の臨の字も見えないくらいポンコツだったっけ?


「あ、言いにくいなら無理して言わなくても……」


「俺の昔の記憶を取り戻すために来たんだ」



聞き慣れない碧人くんの真剣な声が部屋中に響いた。


バッと隣に顔を向けると、揺れない視線は真っ直ぐに北上さんを捉えている。

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