さよならリミットブルー

話によると、付き合ってちょうど1年を迎えた碧人くんと北上さんは展望台でデートをしていたらしい。

あの青色のピアスはやはり2人のお揃いで、北上さんから碧人くんへのプレゼントだった。


お互い片耳ずつ穴をあけて、2人で1つの宝物を作りたかったと北上さんは言う。

そしてーーーー。


「その帰り道にね、信号を待っていたわたしたちに向かって1台の車が走って来ていたの。遠目でもわかるくらい、おかしな猛スピードだった」


頭の中に碧人くんと北上さんの顔が浮かぶ。

その場に居ないわたしでも脳裏にその時の状況がふわりと過った。


「逃げられる距離だったのに。少し走れば何も起こらなかったのに……。

足が竦んで動けなくて、気がついたら目の前で碧人が頭から血を流して倒れてた。

動けなかったわたしを突き飛ばして、碧人はそのまま逃げ遅れた…………」


涙声でなんとか言葉を紡ぐ北上さんの姿を、正直これ以上見ていられなかった。


悪いのは北上さんでも碧人くんでもないのに、突然落ちた絶望はどうすることもできない。

2度と戻れない過去がこんなに憎く思ったことはないだろう。
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