さよならリミットブルー

「目が覚めてすぐに会いに行ったけど「アンタ誰?」って言われちゃって」


少し前まで恋人同士だった相手に忘れられてしまった北上さんはどれほど傷ついたのか。

目の前で碧人くんが車に跳ねられて、追い討ちをかけるように失われた自分の記憶。


忘れることも、忘れられることも、どちらも同じくらい辛いんだ。


それなら、このまま“ただの同級生”にしていいわけがない。

1度惹かれた合った2人だもの、また運命は巡ってくるはず。

ううん、わたしが2人を繋げてみせるよ。


だって、ようやくまた会えたんだよ?

碧人くんが北上さんのことを思い出せば、きっとまた元に戻れると思うの。


「記憶を無くした碧人とは1度顔を合わせたのに、脳が混乱していたみたいで今ではすっかりわたしのことなんか忘れてたみたい」


言いたいことはたくさんあるけれど、どうしても声にはならなくて、軽い返事もできないまま頷くことしかできなかった。


「もう2度と会うことはないと思ってたのに………また、会えるなんてね……」


ゆっくりと頬を流れる一筋の雫。


言わずに心に閉じ込めていた疑問がひとつだけある。

北上さんがなぜ碧人くんの前では「日野くん」と呼んでいたのか。
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