さよならリミットブルー

わたしの勝手な考えだけど、北上さんも碧人くんのことを忘れようとしていたんじゃないかな。

記憶を取り戻すためにこの島に来ていたとは思ってもいなかっただろうし、再会してもなお距離を縮めないように名前を呼ばず壁を作っていたんだとしたら、わたしの中で納得がいく。


「……っ……本当は、ずっと会いたくてたまらなかった」


でも、きっともうそんな悲しい考えは持っていないだろう。

碧人くんが記憶を取り戻すためにこの島に来ていることを知ったんだもの、僅かな可能性に賭けたっていいんだ。


「たとえ全部忘れていたとしても、

わたしはやっぱり碧人のこと忘れるなんてできなかったから。

今でも、好きなの……」


自分のことを思い出してほしいと思うのは当然のこと。

ましてや相手は過去の恋人。


「叶うならもう1度碧人とやり直したいよ………」


そう思って、当たり前なんだ。


「ーーーなんて。

一方的に話しすぎちゃってごめんね。黙って聞いてくれてありがとう。誰にも言えなかった分、ちょっとスッキリしたかも」


辛い過去を聞き出した相手に「ごめんね」なんて言わなくていいのに。

むしろわたしが謝らなくちゃいけないんだよ。
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