さよならリミットブルー



「もうすぐ11時か………」


わたし以外誰の姿もない茂みの中で1人深呼吸を繰り返していた。


うーん、そろそろ来てもいい頃だと思うんだけどなぁ。


被っていた帽子のツバを軽く上に持ち上げて、息苦しかったマスクを呼吸ができる程度に少しずらした。

じっと細めた視線の先には1人の男の人が立っている。


相変わらず文句のつけようがないくらいオシャレな格好で、遠目で見ても芸能人だと勘違いしてもおかしくないレベルの容姿。

通り過ぎる人たち全員が1度は振り返って彼を見ていた。


ーーーほんと、

碧人くんってどこにいても目立つなぁ。


わたしが茂みの中から覗き見をしていた彼とは、もちろん碧人くんのことだ。


実は今日、この前貰った遊園地のチケットを利用して碧人くんを呼び出していた。
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